■コーヒーの精製方法／『ハニー』
コーヒーの精製方法について
『ナチュラル』と『ウォッシュト』については別の記事でご紹介しましたが、今回はその中間とも言える
『ハニー』について、ちょっとだけ詳しく。
コーヒー豆は “コーヒーチェリー” と呼ばれるサクランボのような果実から取り出した「種」だとお話しました。
焙煎前のその種は「生豆（なままめ）」と呼ばれます。
“精製”とは、コーヒーの実から生豆を取り出す作業のことを言います。精製はコーヒー生産地で行い、生豆にした状態で輸出されます。
さて、サクランボを食べると（桃でも良いのですが）果肉を食べた後に、種のまわりにちょっとぬるぬるした感じのものが残りますよね。あのぬるぬる（植物の粘液質）を英語で
「ミューシレージ（mucilage）」と言います。
このミューシレージをスペイン語では
「ミエル（miel）」と呼ぶのですが、スペイン語では「蜂蜜」も同じミエル（miel）なんですね。
精製の工程の一つで、
1.実から皮と果肉を取り除き、
2.ミューシレージが残った状態のものを乾燥させて、
3.種を取り出す。
このやり方をスペイン語で
「ミエルプロセソ（Miel proceso）」と呼んでいたのが英訳された時
「ハニープロセス」になったというわけです。
何故スペイン語？？
それはコーヒーの主要な産地である中南米がスペイン語圏だからです。
当店で扱っている or 扱っていた国でも、中米のグアテマラ・ニカラグア・コスタリカ・パナマ、南米のコロンビア・ボリビアがそうです。
コーヒーにおいては、特にコスタリカなど中米の国々で、新しい精製方法が試されることが多いように感じます。
コーヒー栽培に適した高い標高ではあるけれども、平らではない土地が多く大量生産には不向きな環境が、逆に高品質なコーヒーを生み、少量でも付加価値を付けて高く売ろうという方向に向いているのだと思います。
「ハニープロセス」は、ぬるぬるが付いた状態・工程を経ることで、フルーツとしてのコーヒーの風味や味わいが生豆に移り、そのコーヒーを特徴づけることになります。そしてどの程度その果肉やぬるぬる（ミューシレージ）を残すかによって、飲んだ時のコーヒーの印象はかなり変わります。
皮がついたままであれば、それは
「ナチュラル」ということでハニーという概念からは外れます。
では、皮だけを取ったら？…それはブラックハニーと呼ばれます。
ブラックハニー ⇒ レッドハニー ⇒ イエローハニー ⇒ ホワイトハニー
（…なんだか特撮のヒーロー戦隊みたいですね。）
色の名前の印象どおり、一番ミューシレージの量が少ないのがホワイトです。
ナチュラルに近く華やかで艶やかな飲み口のブラックやレッドから、フレッシュですっきりとした印象もあるホワイトまで、同じ
ハニープロセスでもかなり印象を変えることができ、飲む方も楽しみ方が広がります。
さて、ここまで
精製方法について２つの記事を書いてきました。
つまりは「どうやって中の種を取り出すか？」ということなのですが、コーヒーの世界もどんどん進んでいます。
伝統的な
「ウォッシュト」はぬるぬる（ミューシレージ）をしばらく水につけて取るという方法ですが、その理屈は水につけている間に酵素や微生物によってミューシレージが分解されて取れるという仕組みです。
それは
発酵を利用しているということであり、発酵によって生まれる酸味やアルコール成分などが、そのコーヒーの品種本来の味に特徴的な風味・香味を加えています。
昨今、この酵素に着目した様々な方法が広まりつつあります。
書き出すと長くなってしまうのでここではちょっとヤメておきますが、例えば日本の発酵食品である味噌も、その味噌が造られる蔵に昔から存在する酵母菌がその店の味・特徴になっていると思うのですが、そこに人工的に新たな酵母菌を加えることを良しとするのかどうか？
…そんなところも考えつつ、考えすぎず、まず今はこの傍らのカップのコーヒーを味わって楽しんでいこうと思います。
